『光の塔』(今日泊亜蘭 著)

高校の時にはじめて読んで、社会人になってからも一度読んでるので、今回で3読。
なんか、急に読みたくなって。
 
日本ではじめての本格SF長編。
本書が刊行されたのは昭和37年。
光瀬龍氏や平井和正氏、小松左京氏が<SFマガジン>に初登場した年だそうで。
 
侵略テーマモノです。
燃えます、マジで。
 
どこか森鴎外を彷彿させる宇宙軍少佐で医師で宇宙船船長な主人公。
その主人公が環状線に乗って宇宙省へ向かう場面の臨場感が、まずたまらない。
火星人や金星人が存在している世界観。
軍検察局を『軍検非違使(いくさけびいし)』──イッケビイと歪称する言語センスに脱帽。
一夜にして密室内から消失してしまう核原料や巨大木星船の謎。
そして現れる光り輝く空飛ぶ“円板”と──。
やがてはじまる、“光”による無差別攻撃。
人類になす術はなく、東京が、大阪が、名古屋が、否、全世界の都市が焦土と化していく超絶展開!
 
怪獣映画や侵略モノのSF映画まんまな展開で、“光”の正体や侵略の動機もいま読むと古臭く、あらすじだけ聞くと陳腐。
なんだけど、そんなことはどうでもよくなるほどの怒濤の展開が、読む者を圧倒するのは、まさに作者の筆力の賜物。
多少は自分に言語学の知識がついてる今回の再々読では、とりわけ今日泊氏の言語学への知識・造詣の深さに感嘆させられまくり。
たしかな筆致で描かれる迫力の物語に、読めばトリップすること必至。
 
もちろん面白いかどうかは個人の感性の問題なので、誰にもお薦めというわけではないですが。
というか、いまではもう入手自体が困難かもしれないし。
しかしまあ、個人的にはそれくらい手放しで褒めたくなるくらい好きな本だということで。
だって、地底軍がでてきて、ドリル戦車が地下を掘削して敵の本拠に特攻かけるシーンなんて、涙なくして読めないっすよ?(←微妙に曲解アリ)
 
……ところで私が読んだのはハヤカワ文庫JAの第二刷なんですが。
本文中、空飛ぶ「円板」と記されていたのが、最後のミノルトウのセリフだけ「円盤」となってるのは誤植ではなく筆者が意図的にしたのだろうけど、その芸の細かさが:

光の塔 (ハヤカワ文庫 JA 72)

光の塔 (ハヤカワ文庫 JA 72)