『紫の悪魔』(響堂新 著)

プリオン狂牛病を扱ったバイオ・ミステリ。
新潮ミステリー倶楽部賞島田荘司特別賞受賞作。
 
ボルネオの密林に在る、二度目に訪れた者は“紫の悪魔”に命を奪われると伝わる洞窟。
絶命するまで膚を掻きむしらないではいられないほどの掻痒感に襲われる奇病に罹った4人の患者の共通点。
謎めくふたつの事象が交錯するとき、驚くべき真実が明かされる……。
とか、まあ、そんな感じの内容。
 
製薬会社による特許をめぐる競争(狂騒)や、未開地先住民との土地の所有権問題、熱帯雨林の伐採や遺伝子資源の問題なども呈示されていて、テーマも明確。
物語の核となるアイデアもよし。
作者がやりたいこともよくわかる。
 
でも。
いろんな要素を盛り込みすぎて、全体的に説明的すぎたり。
主人公格が冴えない中年のおっさんふたりだったり。
あるいは一応ヒロインぽい美女も登場するんだけれど、存在感はイマイチだったり。
小説としては、正直、うーん……といった印象。

紫の悪魔 (光文社文庫)

紫の悪魔 (光文社文庫)