『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』

いまでも本屋によっては平積みになってたりする一方、ブックオフとかで105円で叩き売られてたりもするベストセラー。
ベストセラーになるだけあって、論旨は明確、文章は平易で読みやすくわかりやすい。
 
世の中にいる“邪悪な人間”の心理を説いた本。
“邪悪な人間”といっても、詐欺犯や殺人犯やテロリストといった明白な犯罪者のことではなく。

  • どんな町にも住んでいる、ごくふつうの人
  • 自分には欠点がないと思いこんでいる
  • 異常に意志が強い
  • 罪悪感や自責の念に耐えることを絶対的に拒否する
  • 他者をスケープゴートにして、責任を転嫁する
  • 体面や世間体のためには人並み以上に努力する
  • 他人に善人だと思われることを強く望む

そういう人間のこと。
本書では、精神科医である著者がそういう“邪悪な人”たちと交わした会話を再現し、彼らの巧妙な責任転嫁のやり方と隠微なうそを描写し、分析してます。
 
ぶっちゃけ、最初はふつうの人だという印象だったのに、つきあっていくうちになんか変だぞ? と、思うようになっていって、気がつけばまわりにとって迷惑千万な存在になってるのに本人は気づかず、迂闊に指摘してやると逆ギレして、こっちを悪者あつかいしてくるような人間って、本当にどこにでもいて。
他人の話に耳を貸さず、一方的な強弁で相手に自分の言い分を認めさせることを「議論」だと信じていて、自分は絶対正義で、自分に意見するヤツは悪認定、内省がいっさいなく、成功はすべて自分のおかげ、失敗はすべて他人のせいにするような人間と仕事で関わると、本当にろくなことにならないことを、経験的に思い知らされている人も少なからずいると思いますが。
昔、自分も関わっちゃったこと、あるなぁ。
 
著者が5年間計421回のカウンセリングをおこなってもなお、なんの性格改善の効果が得られなかった女性の話とか読んでいると、「話せばわかる」ということばがいかに空虚なものか、よくわかります。
「話せばわかる」ということばをやたら主張する人間ほど、じつはそうやって自分の意見を一方的に押し通してきた人間なのでは? とか、つい邪推したくなるとゆーか。
そういや、政治家にそーゆー人がいたような……いやいや。
 
“邪悪な人”たちと不幸にも関わるハメになってしまった場合、どう対処すればいいか。
その具体策は、残念ながら本書には載ってません。
というか、そういう場合の対処法は唯ひとつ。
「あきらめろ」?

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学

平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学