『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』(ディクスン・カー)

ディクスン・カーカーター・ディクスン)は、ミステリにハマるきっかけになった作家。
かつ、いまでもハマりつづけている唯一の作家。
一時、刊行されてる翻訳を一気に買い集めまくったため、どれが既読でどれが未読がわからなくなって、いまに至ってて。
なので幸か不幸か、まだ読んでない著作もわりと残ってる。
アンチも多いらしい作家だけれど、好きなものはしょうがない。
 
で、本書はそのカーの歴史ミステリ。
ようやく文庫化されたので、即買い。
十七世紀のイギリスで実際に起きた未解決の殺人事件を、当時の資料や記録を精緻に調べ上げ、事件の真相を推理していくという内容。
というと、『時の娘』(ジョセフィン・テイ)や『邪馬台国の謎』『成吉思汗の謎』(ともに高木彬光 )あたりをなんとなく連想してしまうけど、そこはやはりカー。
趣がぜんぜん違う。
 
ひとりの治安判事の死が、政治の思惑に利用され、あげく何人もの人間が冤罪で死刑にされていく。
はじめに結論ありきな裁判の生々しい描写は、まさにカーの真骨頂?
王政復古時代のイギリス史や風俗、当時の宗教観や歴史上の有名人を知らないと、ついていけない部分もわりとある。
まわりくどくてゴチャゴチャしていて、なにがいいたいのかよくわからない文章、文体。
まさにカー、これぞカー。
ミステリとしては特筆すべき内容ではないけれど、カーに酔うには最適な1冊かも。

エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (創元推理文庫)

エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件 (創元推理文庫)