『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一)

「生命とはなにか」を追求する生物学の本。
 
名は知られてないが、淡々と「生命」について探求し続けた生物学者のエピソードとその研究成果。
あるいは、DNAの二重螺旋構造を“発見”したワトソンとクリックにまつわる、スキャンダルめいた逸話等を盛りこみながら、「生命」の深淵を探っていく。
 
「自己複製するもの」
というのが、「生命」の定義であることは、疑うべくもない。
 
物理学者のシュレーディンガーは著書『生命とは何か』で、「生命」がエントロピー熱力学的平衡状態に陥ることなく長く生き続けるのは何故かと問う。
 
結論として、増大するエントロピーを系の外部に捨て去るシステムが、「生命」には組み上がっている。
孤独の研究者シェーンハイマーの発見した「生命の動的な状態」という概念を拡張し、本書の著者はそれを“動的平衡”と呼び、生命を再定義する。
 
ノックアウト遺伝子にまつわる話も興味深い。
ただ、生物学者の置かれている現状や論文レース等にも頁が割かれたり、ノスタルジックな情景描写がやや冗長に挿し挟まれていたりして、正直、とりとめのない印象もしないでもなく。
が、内容的には良書。
説得力はある。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)