『日本の弓術』(オイゲン・ヘリゲル)

著者のオイゲン・ヘリゲル(1884−1955)は、ドイツの哲学者で、後に禅の研究に没頭した人物。
大正15年頃、来日して弓道の大家に師事、5年間の修行で5段の免状を経て帰国。
本書はそのヘイゲル氏が、帰国後ドイツで行った講演の原稿を翻訳したもの。
ちょっと長めのエッセイ程度の文章で、さくっと読了可能。
   
本書で扱う弓道は、的に矢を当て得点を競うスポーツとしての弓術ではなく、精神修養・悟道の方法としての「求道=弓道」の方。
合理的・論理的思考に慣れたヨーロッパ人が、非合理的・直感的な日本の思考をいかにして理解していくのか。
その辺のことが、まさに合理的・論理的に分析されていて、わりと興味深い。
 
著者が来日した大正時代も現代も、日本人の精神性というものは、そう大きな変質はしてないとは思う。
でも、戦前に書かれたこういうのをいま読むと、日本文化を勘違いして学んだ外人さんが、勘違いしたまま帰っていった……みたいな印象もしないでもなく。

日本の弓術 (岩波文庫)

日本の弓術 (岩波文庫)